経済産業省ではロボットについて「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。
そのロボットの中でも「産業用ロボット」とは、自動車産業、電子・電気産業、食品産業など、幅広い分野の生産ラインで活用されているロボットのことを言います。
具体的には、溶接、塗装、組み立て、仕分け、運搬などの作業を、ロボットを使って行っています。
産業用ロボットは、さまざまな分野で活用されていますので、数多くの種類があります。分類方法にもいろいろありますが、大きくは、以下の7種類に分類することができます。
直角座標型ロボット(直交座標型)
3次元の動きを回転ではなく、縦、横、高さという3方向の直交するスライドのみで実現するシンプルな機構の産業用ロボットです。
直線的な移動のみなので作業は限定されますが、構造がシンプルなため、設計の自由度が高く、1軸(単軸)、2軸、3軸、4軸、6軸と、用途に応じて軸数を増やせます。
近年では、多関節ロボットと組み合わせて使われるケースが増えています。
直角座標型ロボットは安価なので、手軽に導入できる点がメリットです。制御プログラムも比較的容易で、命令も多軸ロボットと比べると簡単でシンプルです。
産業ロボットとしては小型のものが多く、小さな部品の組み立てや搬送工程などに多く使われています。
円筒座標ロボット
ベースに一番近い関節に回転関節を持ち、それに続いて2つの直動関節を持つロボットです。直角座標型ロボットに比べると、作業領域を広く取ることができます。
旋回軸を持ち、アームが伸縮するという動きは、極座標ロボットと似ていますが、円筒座標ロボットのアームは上下回転ではなく、上下方向に移動します。産業用ロボットの普及が始まった初期に導入されたものが多いですが、現在でも、液晶パネルの搬送などに利用されています。
極座標ロボット
砲台のように中心に旋回軸があり、作業を行うアームは上下回転と伸縮が可能なロボットです。直角座標型ロボットや円筒座標ロボットより、広い作業領域を確保することができますが、アームの先端の姿勢が変化するため、制御は複雑になります。
産業用ロボットが普及し始めた初期に活躍したロボットですが、現在ではほとんど使われなくなっています。
多関節ロボット(垂直多関節型)
垂直多関節ロボットには人間で言う肩や肘、手首のような関節があり、人の腕と同様に複雑な動きが可能で、現在もっとも活用されている産業用ロボットです。
ロボットアームとも呼ばれ、その多くは3次元空間作業に必要な6軸可動のものが多いですが、4、5軸や7軸のものもあります。
ロボットの用途として大きな比率を占める溶接や塗装に使われるのも、多関節ロボットです。さらに、物流拠点や部品加工工場などさまざまな現場で活用されています。
軸数が多いと動きの幅が広がり、腕を折り曲げれば狭い場所でも効果的に使えます。動きの自由度が非常に高く、回り込んでの作業も得意ですが、制御はやや複雑になります。
スカラロボット(水平多関節型)
水平方向の2つの回転軸と、垂直方向の1つの直線軸で構成される産業用ロボットです。この3軸に加え、手首にも水平の回転軸を持たせた、4軸の製品が一般的です。英語では「selective compliance assembly robot arm」となり、その頭文字を取って「SCARA型ロボット」「スカラロボット」とも呼ばれます。
複雑な動作ができる垂直多関節ロボットと違って真上からの作業しかできませんが、水平方向にやわらかさを持っているため、部品の押し込み作業や高速でのピック&プレース、半導体ウエハの搬送や、基板の組み立てなどで幅広く利用されています。
パラレルロボット(パラレルリンク)
2本セットのアーム3対(あるいは4対)で1つの先端を支持するタイプのロボットです。先端にはワークを吸い付けて搬送するための吸着ユニットなどが取り付けられます。
可動範囲はやや狭いものの、各関節が直接、先端を制御するため、非常に高速に動けるという特徴があります。
細く軽量なアームでも十分な剛性を確保できるため、ベルトコンベヤーの上などに取り付けられ、流れてくる食品の整列や選定などに利用されます。
双腕型ロボット
両手で箱を持つなど、ロボットアーム1本ではできない動きが可能なロボットです。省スペースで高難度かつ精密な作業をすることができます。
人の作業をそのまま置き換えることができるので、便利です。